こんにちは。
内山公認会計士事務所の内山でございます。
今月も相続対策のお役に立つ知識を、専門家としての立場から分かりやすく解説させていただきます。
本コラムでは相続対策や相続税についてお話ししておりますが、もし相続税を払えなかったとしたら? ということを考えたことはあるでしょうか。そうならないための相続対策なのですが、知識としてもし払えなかったら? を知っておくことに損は無いと思います。
そこで今回のコラムでは「相続税が払えない時はどうしたらよいか?」というテーマで解説してまいります。特に不動産資産を多くお持ちの方は参考となる内容ですので、ぜひ最後までお付き合いください。
相続税の仕組み
まずは、相続税の基本についておさらいしておきましょう。
相続税は故人が残した財産(不動産、金融資産など)の合計額から、基礎控除を差し引いた金額に対して課税されます。基礎控除は、「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算され、この金額を超える財産に対して課税されます。
例えば、法定相続人が3人の場合、基礎控除額は4800万円となります。この基礎控除を超えた部分に、税率(10%〜55%)が適用されます。 ただし、現金や預金で財産が残されていない場合や、相続財産の多くが不動産など流動性の低い資産である場合、相続税の支払いが困難になることがあります。
相続税を支払えない時はどうする?
相続税の支払いが困難な場合、すぐに税務署に相談することが大切です。
相続税を支払うことが難しい場合に一番やってはいけないことの一つが無視です。役所に相談したからといって必ずしもすべてが解決するわけではありませんが、無視をしたままですと無申告加算税の対象となるケースもありますので、必ず事前の相談を行うようにしましょう。
相続税の場合は通常、相続が発生してから10か月以内に申告し支払う必要がありますが、その期限までに資金が用意できない場合以下のような対応策があります。
延納制度
相続税を一括で支払うことが困難な場合、税務署に延納の申請をすることができます。延納制度の条件は下記の通りです。
(1) 相続税額が10万円を超えること。
(2) 金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額の範囲内であること。
(3) 延納税額および利子税の額に相当する担保を提供すること。ただし、延納税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下である場合には担保を提供する必要はありません。
(4) 延納申請に係る相続税の納期限または納付すべき日(延納申請期限)までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して税務署長に提出すること。
ただし、延納には不動産など担保の提供が必要であり、一定の利子税もかかります。また、延納の申請をしたからといって必ず通るわけではないということも注意しておきたい点となります。
物納制度
延納でも支払いが困難な場合、物納制度を検討できます。物納は、現金の代わりに不動産や有価証券などの財産で相続税を納める制度です。
ただし、物納できる資産は制限されており、また評価額が税額を下回る場合には差額を現金で補填する必要があります。
具体的な対策
相続税の支払いが難しい状況を避けるためには、事前に対策を講じることが重要です。以下のような方法で、相続税の負担を軽減できる可能性があります。
まず初めに検討する方法として生命保険の活用が上げられます。生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人の数)を活用すると、相続税の課税対象となる財産を減らすことができます。また、生命保険の死亡保険金は現金として受け取れるため、相続税の支払いに充てることができます。どのような保険商品を活用したらよいか? についてはケースによって異なるため、詳しくはお問い合わせください。
また、生前贈与の活用も考えられます。毎年110万円までの贈与は非課税であり、これを繰り返すことで将来の相続税の課税対象となる財産を減少させることができます。ただし、大規模な贈与を行う場合は、贈与税がかかる点に注意が必要です。もう一点注意としては、贈与の持ち戻し期間は7年となりますので、相続発生前7年の贈与は相続財産に持ち戻して計算されることになります。
今回のまとめ
相続税の支払いが困難な場合には、延納や物納といった方法があることを理解し、税務署に早めに相談することが大切です。しかし、最も重要なのは、事前に相続税対策を講じることです。生命保険の活用や生前贈与などを計画的に行うことで、相続税の負担を軽減することができます。
相続税の納税に不安のある方はぜひお気軽に当事務所までご相談ください。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。