老老相続にどう備えるか?

こんにちは。

内山公認会計士事務所の内山でございます。

今月も相続対策のお役に立つ知識を、専門家としての立場から分かりやすく解説させていただきます。

読者の皆さんは「老老相続」という言葉を聞いたことはあるでしょうか? 似たような言葉に老老介護というものもありますが、これは介護する側もされる側も高齢者というものです。

老老相続も同様に、財産を渡す側・受け取る側それぞれが高齢者であるという相続の形になります。女性の平均寿命が87歳を超えている現代ですので、例えば90代の親が70代の子どもに財産を遺すケースも少なくありません。

また、高齢化は進んで行く一方ですので今後はさらに一般化する見通しです。そこで今回のコラムでは「老老相続にどう備えるか?」と題して、問題点や対策を分かりやすく解説して行きます。ぜひ最後までお付き合いください。

目次

老老相続の問題点

既述の通り、相続に登場する人物それぞれが高齢者である場合を老老相続と言います。高齢者であるがゆえに次のような問題点が存在します。

1.相続人の体調や介護負担

2.資産管理のリスク

3.数次相続による税負担の増加

一つずつ見て行きましょう。

相続人の体調や介護負担

老老相続では相続人自身がすでに高齢であることが多く、相続を受けた後の財産管理や手続きが負担になりやすいのが現状です。例えば、相続後に相続人が自身の介護を必要とするようになった場合、相続した財産が介護費用に消えることもあります。また、高齢者にとっては、相続の手続きや財産管理は肉体的・精神的な負担が大きいため、円滑に進めることが難しいことも多いです。

資産管理のリスク

上記のような受け取った財産を自身の介護にあてるということであれば有効な使い方と言えるかもしれませんが、判断能力が低下してしまっている場合はどうしたらよいでしょう? そのような場合は法定後見に頼らざるを得なくなりますし、財産の管理だけではなく、日常生活についても助けが必要となり、家族には大きな負担がかかってしまうことにもなります。高齢の相続人には、自身で判断能力を有しているか? という点は非常に重要な要素なのです。

数次相続による税負担の増加

老老相続の場合、財産を受け取った相続人が短期間で亡くなり、次にまた相続が発生する「数次相続」のリスクが高まります。この数次相続は、遺産分割や相続税の負担が増加することにつながり、家族にとって大きな負担となります。また、手続きが重複することで相続人の精神的・経済的な負担も増えてしまいます。

老老相続への具体的な対策

いわゆる通常の相続とは異なる問題を抱える老老相続ですが、どのような対策が求められるでしょうか? 対策方法としては通常行う相続対策と近いものがありますが、高齢者であるが故の手法も存在します。ここでは具体的な対策として4つほどご紹介させていただきます。

早めの生前贈与で負担を軽減

親が元気なうちに生前贈与を活用することで、相続税の負担を軽減しながら、スムーズに資産を次世代に引き継ぐことができます。年間110万円までの生前贈与なら非課税というのは有名ですが、これをうまく活用し子世代・孫世代まで贈与契約書を交わし、毎年贈与して行くという手法がございます。

また、相続時精算課税という手法も存在しますので、専門家も交えた上でどのような贈与を行うと有利になるのか相談し実行して行くと良いでしょう。

家族信託による資産管理の工夫

高齢の親が相続した財産を管理しきれなくなるリスクがある場合、家族信託を活用する方法もあります。家族信託とは、信頼できる家族に財産の管理を任せる制度で、契約により親が財産を適切に維持するための役割を果たします。信託契約を結ぶと、管理は信託を受けた人が行うことができるため、相続人が安心して資産を引き継ぐ準備が整います。 この手法も先の贈与同様に孫世代にも協力してもらう対策になります。

遺言書の作成で意志を明確にする

老老相続では、財産分配の意志を明確にしておくことが重要です。複数の相続人がいる場合や、配分に対して意見が分かれる可能性がある場合には、遺言書を作成することでスムーズな相続が進めやすくなります。信頼できる専門家に相談しながら、法的に有効な遺言書を作成することで、家族間でのトラブルを回避し意思通りの分配が可能になります。

エンディングノートや終活で家族に備えを伝える

エンディングノートは、自分の財産や希望を家族に伝えておく手段として有効です。自分の思いをノートにまとめておけば、家族が相続手続きを進める際の参考になり、先の遺言書と併せて遺すことが出来れば、スムーズに遺産分割が行えるようになります。終活を通じて「自分がどうしたいか」を家族に伝え、安心して相続を迎えられる環境を整えましょう。

今回のまとめ

高齢化社会と言われて久しいですが、相続の世界にまで影響があるとは正直思ってもみませんでした。実際に老老相続の件数自体は増えて行くことが予想されますが、その対策としては一般的な相続対策の枠に収まるものばかりです。しかし、孫世代の協力も必要になってくる対策が多く存在しますので、家族間でどのように財産を守り受け継いでいくか話し合い、相談して行くと良いでしょう。

当事務所では相続対策についてのご相談も承っておりますので、お住まいの地域に関わらず遠方の方でもお気軽にご相談ください。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

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