こんにちは。
内山公認会計士事務所の内山でございます。
今月も相続対策のお役に立つ知識を、専門家としての立場から分かりやすく解説させていただきます。
今回は、「親の家を子どもがお金を出してリフォームしたら税金はかかるの?」というご相談にお答えしたいと思います。
お父さんやお母さんが住む家を少しでも快適にしてあげたいと考えて、自分のお金でリフォームをしてあげるというのはとても親孝行な行為です。
しかし、実はこのような親切心からの行動が「税金がかかる原因」になることがあるのです。
そこで今回は、なぜ税金がかかる可能性があるのか? どうすれば無駄な税金を避けられるのか? という点について解説していきます。
もし、実家のリフォームをお考えの方がいらっしゃれば参考になりますのでぜひ最後までお付き合いください。
リフォームしたのに名義は親のまま…ということは?

たとえば、お父さんの家を息子さんが自分のお金で1,000万円かけてリフォームしたとします。このとき、リフォームした部分も含めて、家の名義(所有者)はお父さんのままです。
建物の名義が変わらないということは、「リフォームで価値が上がった家の全部が親のものになった」と考えられます。
つまり、「親が子からお金(またはそれに近い価値)をもらった」という扱いになるのです。 このような場合、贈与税の対象となってしまう場合があります。
贈与税とは?
贈与税と聞けば「年間110万円の控除」を思い浮かべる方も多いと思いますが、財産をタダ同然の安い価格でもらった場合にもかかる可能性があるのです
リフォームの費用は通常数百万円以上になりますから、110万円の控除はすぐに超えてしまいますし、親の側が対価を支払っていない以上贈与税が課税される可能性は高いと言えます。以上の事から「親の家を子どもが自分のお金でリフォームする」という行為には、注意が必要なのです。
税金をかからないようにするには?

では、どうすれば贈与税がかからずに済むのでしょうか?
ポイントは、「親が子にきちんとお礼(対価の支払い)をする形にする」ということです。
本来は親が払うべきだったリフォーム費用を子どもが負担したわけですから、その分、親が子どもに「返す」ことができます。でも、親にそのお金がない場合は、**家の一部を子どもの名義にする**ことで返す、というやり方があります。 これを「代物弁済(だいぶつべんさい)」といいますが、ここでは簡単に「リフォーム代の代わりに家の一部を渡す」と考えてください。
家の一部を子に渡すときの注意点
家の一部を子どもに渡すと「売った」と見なされて、親に**別の税金(売ったことによる税金)**がかかることがあります。
でも、ここでも工夫次第でその税金をゼロにすることが可能です。
たとえば、次のような場合です。
* リフォームする前の家の価値:300万円
* リフォーム費用:1,200万円
* リフォーム後の合計の価値:1,500万円
* 子どもに渡す家の割合:1,200万円 ÷ 1,500万円 = 80%
このようにすれば、「もらった分」と「渡した分」が同じ価値になりますので、親にかかる税金はゼロになるのです。 このようにして、贈与税も売却による税金も発生させずに、親と子の双方にとって納得のいく形にすることができます。
事前に家の名義変更をしていたら?
リフォームの前に、家の名義をあらかじめ親から子どもに移してしまうという方法もあります。
ただし、この方法も注意が必要です。
家をタダで名義変更すると、それ自体が「贈与」となり、贈与税がかかります。また、売ったことにしてお金を受け取らない場合は、「時価より安く売った」と判断され、やはり贈与とみなされます。
結局のところ、「お金を出した人と名義人を一致させる」「出したお金に見合う対価を受け取っている形にする」ことが重要です。
共有名義にするメリットとデメリット

家の一部を子どもに渡すことで、家が「共有」になります。
これは税金対策としては有効ですが、将来的にはトラブルの種となることも。
たとえば、将来家を売るとき、共有者全員の同意が必要になります。親が亡くなった後、相続が発生した場合も、共有持分の分割で揉めることがあるのです。
また、親が住み続けている場合、住んでいない子どもが共有名義人として固定資産税の支払いや管理責任を負うことにもなりかねません。
ですので、税金のことだけでなく、将来の家族の状況まで見越して判断することが大切です。
今回のまとめ

親の家を良くしたいという気持ちは素晴らしいものです。
でも、やり方を間違えると、せっかくの親孝行が税金の対象となってしまうこともあります。
家族間のことであっても、お金が動くときには税金の問題が発生します。
リフォームや名義の変更など大きなお金が動く前に、ぜひ一度弊所へご相談ください。
親のために何かしてあげたい。そんなあたたかいお気持ちを、無駄な税金の負担なく実現できるよう、しっかりとサポートさせていただきます。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

