法定相続分と遺留分

こんにちは。

内山公認会計士事務所の内山でございます。

今月も相続対策のお役に立つ知識を、専門家としての立場から分かりやすく解説させていただきます。

相続法の改正以来、相続に関するご相談は年々増えているのが現状です。一昔前は相続と聞くと「お金持ち」のイメージがあったかもしれませんが、いわゆる一般的な家庭の方でも相続に関する最低限の基礎知識は持っていないと、いざ相続が発生してしまった際にどうしたらよいのか? と困ってしまうことになりかねませんし、不要なトラブルに巻き込まれないとも言い切れません。

そこで今回のコラムでは相続基礎知識の中でも基本中の基本となる、法定相続分と遺留分について解説させていただきます。 専門家としての目線から最低限これだけは知っておいてほしいというものですので、ぜひ最後までお付き合いください。

目次

法定相続人とは? 誰が財産を受け取るのか

上表は「遺言書がない場合」に適用される基本的な取り分であり、遺言書で別の分配が指示されている場合にはその内容が優先されます。また、相続順位という遺産を受け取れる順番も存在しますので詳しく見ていきましょう。

法定相続人の順位とその意味

法定相続人には以下の順位があります。上位の順位に該当する人が存在する場合、下位の順位の人には相続権は発生しません。

第1順位:子(実子・養子を含む)

 被相続人に子がいる場合、その子が法定相続人になります。子がすでに亡くなっている場合は、その子(孫)が代襲相続人として相続権を持ちます。

第2順位:直系尊属(父母・祖父母)

 被相続人に子がいない場合は、被相続人の父母や祖父母が相続人となります。

第3順位:兄弟姉妹

 子も直系尊属もいない場合には、兄弟姉妹が相続人となります。兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合は、その子(甥・姪)が代襲相続しますが、甥姪の子には相続権がありません。

配偶者の位置づけ

被相続人の配偶者(法律上の婚姻関係にある者)は、常に相続人となります。順位に関係なく、他の相続人とともに相続分を受け取る権利があります。

ただし、法律婚ではなく“事実婚(内縁関係)”の場合は、配偶者と認められず相続人にはなりません。この場合、遺言書などによる対応が必要になります。

代襲相続とは?

相続が発生した時点で、法定相続人がすでに死亡している場合、その人の子や孫が代わりに相続する制度を「代襲相続」といいます。

上図の場合は相続開始前に被相続人の子どもが亡くなっています。この場合、その子(孫)が相続人になります。ただし、表にもあるように亡くなった子供の配偶者は法定相続人とはなりません。また、兄弟姉妹の場合の代襲相続は一代限り(甥姪まで)です。それ以降の世代(甥姪の子など)には相続権がありません。

この代襲相続の制度により、家族の構成が複雑であっても、相続権が世代を超えて一定程度保障される仕組みとなっています。

遺留分とは? 遺言で自由にできない財産の一部

遺言書を作成する際に注意すべき重要なポイントが、「遺留分(いりゅうぶん)」の存在です。

遺留分とは、法律によって保障された相続人の最低限の取り分であり、被相続人が自由に処分できない財産の一部を意味します。たとえば、「全財産を○○に遺贈する」という遺言書があっても、遺留分を有する相続人は、それに対して法的に異議を申し立てることが可能です。

遺留分を主張できるのは、以下の法定相続人に限られます。

・配偶者

・子(または代襲相続人である孫)

・直系尊属(父母、祖父母)

ご注意いただきたい点として、兄弟姉妹に遺留分の権利はありません。

遺留分の割合とその計算

遺留分の割合は、相続人の構成によって異なります。民法で定められた割合は上表の通りです。

遺留分侵害額請求とは? 遺言による偏った分配への対処法

もし遺言によってある相続人の遺留分が侵害されていた場合、その相続人は「遺留分侵害額請求」を行うことで、侵害された分に相当する金銭的な補償を請求できます。

請求期限と注意点
遺留分侵害を知った日から 1年以内
相続開始の日から 10年以内

この期限を過ぎると、請求する権利は消滅してしまいますので注意が必要です。また、侵害された遺留分は原則として「金銭での支払い」が求められ、現物の不動産などの返還を請求することは通常できません。

遺言書を作成する際に注意すべきこと

相続争いを防ぐために遺言書の作成は有効な手段です。しかし、遺留分に配慮しない遺言書を作ってしまうと、かえって相続人間のトラブルを招く原因になります。

以下に遺言作成時のポイントをまとめましたので参考になさってください。

・上表を参考に遺留分を侵害しないように配慮する

・特定の相続人に偏りすぎない分配を検討する

・生前贈与や保険なども含めて全体のバランスを考慮する

・専門家に相談する

また、遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」などの形式があり、それぞれ法的要件や手続きが異なります。特に確実性とトラブル回避を重視するなら、公正証書遺言の作成が有効です。

今回のまとめ

相続は、遺された家族の暮らしや関係性に大きな影響を及ぼします。法律の仕組みやルールを理解しないまま相続を進めてしまうと、思いがけないトラブルを招くことも少なくありません。

特に、今回解説させていただいた法定相続人の範囲や遺留分の考え方は、相続手続きの中でも基本となる重要なポイントです。事前にしっかりと知識を身につけ、適切な準備を進めることが、円満な相続を実現する鍵となります。

相続について不安がある場合や、複雑な事情を抱えている場合は早めに当事務所までご相談ください。相続は「誰にでも訪れる」ものです。今のうちから備えておくことが、家族を守る最善の方法といえるでしょう。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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